『マスター・オブ・ゼロ』ミレニアル世代が怖いこと

Netflixドラマ『マスター・オブ・ゼロ』はミレニアル世代を巧みに描く現代的今日的要素を活かしながらいつの世も人間が抱く普遍的なテーマを孕んでいる。 『マスター・オブ・ゼロ』が描くミレニアル世代 高齢者が多い『マスター・オブ・ゼロ』 多くの選択肢…

ジョイ/銃をとったシンデレラ

実在の発明家を描いた映画であるが、まるでシンデレラのようなおとぎ話が志向されている。1980年代アメリカのシンデレラはハンサムな王子様は求めない。男性社会の中で契約相手を探し、魔法使いに資金を求め、銃をとるのだ。 【目次】 【目次】 1.シンデレ…

名探偵コナン 純黒の悪夢★★★ミステリ消失

『名探偵コナン』と題される本作のジャンルはミステリのはずだが、昨年度の失敗の為かミステリ要素が極限まで排除されアクション映画と化している。 【目次】 ミステリを廃した『劇場版名探偵コナン』 ネタ感想 1.ミステリを排した『劇場版名探偵コナン』 …

ファッションシーンの日本アニメブーム エヴァンゲリオン、ドラゴンボール、セーラームーン、FF、エロetc

2015年ごろからパリコレ等でよく見かける、海外ファッション・ブランドの日本アニメ・デザインをまとめました。紹介するアニメ作品とブランドは目次参照。 【 目次】 エヴァンゲリオン&セーラームーン&ファイナルファンタジー / Louis Vuitton ドラゴンボ…

ビヨンセが『スター誕生』主演を切望した3つの推定理由:共通する音楽キャリア、思想、恋愛

2016年3月、1976年版『スター誕生』リメイク映画からビヨンセが降板した噂が報じられた。2011年時点の監督はクリント・イーストウッド、それが頓挫したのちの2015年にブラッドリー・クーパー監督説が浮上したプロジェクトである。4、5年に及ぶ交渉期間を…

キングスマン★★ブラック・ジョークに見えるピュアネス

マシュー・ヴォーンはピュアネスな作家だ。私にとって『キングスマン』はブラック・ジョーク作品ではなく「好きなことを無邪気に楽しむピュアネスな映画」である。ヴォーンは差別主義者殺害も楽しんでいる。 【目次】 観客の攻撃性を刺激する構造 マシュー・…

執筆*セレブリティ・ウォッチャーが選ぶ、2015年最も世間を騒がせたファッションセレブリティ10人 – THE FASHION POST [ザ・ファッションポスト]

fashionpost.jp THE FASHION POST様の記事『セレブリティ・ウォッチャーが選ぶ、2015年最も世間を騒がせたファッションセレブリティ10人』に携わせていただきました。 記事中ではノース・ウェスト、ケンダル・ジェンナー、ジャスティン・ビーバー、テイラー…

ウォーリアー★★★テアゲネスと白鯨とベートーヴェン

映画『ウォーリアー』の父と兄弟はそれぞれメタファーを背負っている。弟は英雄テアゲネス、父は『白鯨』、そして兄はベートーヴェン。この3つのメタファーから三者を考察する。 【目次】 弟テアゲネスが本当に欲しかったもの 白鯨と闘う父 ベートーヴェン…

『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』イラク戦争のメディア戦略

『ハンガー・ゲーム』はメディアの物語だ。メディアに纏わり付かれた主人公カットニス・エヴァディーンは「ヒーロー」ではなく「広告塔」、そして「戦争の被害者」である。イラク戦争を発端に開始された本シリーズは巧みに「戦争下のメディア戦略」を描き、…

『偽装の夫婦』立派な結論、しかし功罪の功しか描かぬ構成不備

『偽装の夫婦』の結論は多様性肯定だ。性的関係が無くとも、互いが「家族になりたい」と思ったなら家族になって良い。この提唱は異性愛&恋愛至上主義とは対極にあるだろう。しかしながら、この提唱は成立しきれていない。提唱自体を発する地盤となる作品自…

何がジェーンに起ったか?★★★★★いい子になれたジェーン

『何がジェーンに起ったか?』において“起ったこと”は、尊大であったベイビー・ジェーンが“いい子になれたこと”である。序盤と終盤シーンの類似はその変化を表している。 又、姉妹間には嫉妬の他に互いの罪悪感が大きく介在している。その為、単純に「姉妹間…

国家ある絶望『タクシードライバー』と国家なき夢『ナイトクローラー』:70年代ナショナリズムと10年代キャピタリズム

『ナイトクローラー』と『タクシードライバー』を比較することで1970年代と2010年代のアメリカ社会の違いを考察する。こちらのサイトにあるように、2作は多くの共通点を持つ。車に乗る夜の仕事、鏡、孤独な一人暮らし、ダイナー、年齢差ある年齢……。そして…

『ナイトクローラー』経済映画としての失敗、エンタメ寓話としての成功

『ナイトクローラー』は今日の資本主義システムを提示する映画だ。社会派、経済映画として作られた。監督側が最も表現したい物は主人公ルーではなく、ルーを産み出す今日の資本主義システムなのだ。だからカメラはルーを野生動物のように映す。まるで、野生…

『わたしに会うまでの1600キロ』立派すぎた助手席の娘

ダメ人間讃歌ではない。「立派すぎた母と駄目な娘の物語」でもない。主人公の凋落は、「立派すぎた母と娘ゆえの悲劇」だ。自分の人生の運転席に座れなかった母親と同じく、主人公もまた「母の立派な娘」という助手席に乗り続けていた。1,600キロの横断は、彼…

『デスノート』友人想いのLと立派な父親、ただ消え去るだけの凡人殺人鬼

ドラマ版『デスノート』は罪悪感から免れる為に新人格「キラ」を創り出してしまう物語である。物語が進むにつれ、月はどんどんキラを自身の人格に取り込んでしまう。最終的には完全にキラに呑み込まれ、月自身がキラとなる。この「キラ」化の通過儀礼となっ…

『ど根性ガエル』二次元を現実へ書き換える延命

ドラマ版『ど根性ガエル』の命題は「二次元世界」を「現実世界」で延命させることである。その「二次元世界」とは原作に他ならない。原作が持つ「二次元世界」の最たるメタファーがピョン吉。だからドラマの主題は「現実世界でのピョン吉の延命」となる。ド…

『羊たちの沈黙』レクター博士とクラリスが触れ合うシーンの元ネタ:殺人鬼と尼僧見習いの洗礼

トマス・ハリス『羊たちの沈黙』の登場人物であるハンニバル・レクターは複数の実在殺人鬼のモデルを持つ。その中の1人が、獄中からFBI捜査に参画した連続殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカスである。平山夢明『異常快楽殺人』によると、どうやらこのヘンリーは…

私的VMA最優秀賞ビデオ政治部門 Nicki Minaj『Anaconda』/Kendrick Lamar『Alright』/ Rihanna 『Bitch Better Have My Money』

フェミニズムとブラック・リブズ・マターの年である。noicey by VICEによると、昨今のアメリカ音楽シーンにおけるフェミニズム活性化の契機となったMVは2013年のロビン・シック『Blurred Lines』、マイリー・サイラス『We Can't Stop』。VMAはそれぞれを2013…

私的VMA最優秀賞ビデオ商業部門 Taylor Swift 『Blank Space』/Mark Ronson ft. Bruno Mars 『Uptown Funk』/Nicki Minaj ft. Beyoncé 『Feeling Myself』

2015 MTV Video Music Awardsが揺れた。ニッキー・ミナージュとテイラー・スウィフトの会話が大きな話題となったが、実はニッキーが声を挙げる前からノミネートへの疑問の声は多く挙がっていた*1。ノミネート・リストはこちら。商業主義なら、何故One Direct…

リアーナ『Bitch Better Have My Money』が明示したフェミニズムと人種差別の衝突/暴力の時代とブラックスプロイテーション映画の復活

2015年7月1日にリリースされたリアーナ『Bitch Better Have My Money(以下BBHMM表記)』が議論を巻き起こしている。動画冒頭で告知されるように、未成年禁止レイティングで、性的かつ暴力的な映像が続く。ここまで過激なら議論が生じても不思議ではないが…

危険ドラッグ業の概要 暴力団&中国との関係 謎の北朝鮮

一ヶ月で15人の使用者を死に至らしめた「ハートショット」事件から少し経ち、日本の危険ドラッグは衰退フェーズに入ったらしい。厚労省麻薬取締部が法的拘束を強めた為、「逮捕されやすい犯罪」を避ける半グレ集団たちが撤退した。これが本当なら日本は「世…

危険ドラッグ業から退いた半グレは金密輸に走る/でも堅気には戻れないワケ

溝口敦『危険ドラッグ 半グレの闇稼業 (角川新書)』によると、2015年現在、危険ドラッグ業は法規制により商売しにくい状態らしく、それをシノギにしていた半グレ達は、2013年頃から「金インゴット密輸」に走ったらしい。この密輸は、一時「ド素人でも4年で…

『グローリー/明日への行進』反差別ゲーム

"LoveWins"。2015年6月26日、アメリカ合衆国全州において同性婚が合法化された。この可決に大きく寄与したのは世論変化だ。WSJ紙によると、1990年時点ではアメリカ人の8人中7人が「同性愛は正しくない関係」と見なしていた。2004年にしても同性婚支持率は…

デスノート(B)キラに殺されるキラ/ど根性ガエル(A)サザエさん時空vs.現実

映画『クロニクル』に似た『デスノート』1〜2話、ピョン吉を否定する危険性を孕む挑戦に出た『ど根性ガエル』1話の感想です。 デスノート/キラに殺されるキラ ドラマ版の夜神月は普通の大学生である。「やれば出来るのに」と認められながら、安定の為に…

『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』親殺しと子殺しの同居

まるで婿舅ドラマである。カイル・リースはT-800に「サラ・コナーの婿に相応しいか」審査されているような絵面。そんな家族的物語の印象を残す本作は、タイムトラベルによって多くの「親殺し」と「子殺し」を発生させている。非常に複雑な関係性に注目すると…

2015年度ゴシップ上半期アワード〜前編〜

ゴシップ−醜聞−……。それは毎日毎秒、供給され、受容され、そして忘れ去られてゆく存在……。ゴシップ文化により芸能人の人生は消費され、また、それを受けた芸能人側も話題になる為に仕込みゴシップを供給する、現代社会の闇構造……。本アワードは、そんな芸能…

'15上に聴いたジャズ、クラシック、モダンクラシカル (Brasstracks/AVISHAI COHEN TRIO/FRANÇOIS-XAVIER ROTH/Nils Frahm/Michael Price)

掴みとして人気曲のBrassリミックス。SoundCloudのFlow-Fi界隈にて活躍する、フューチャーベース+Brassな2人組BrasstracksによるRihanna and Kanye West and Paul MacCartney『Four Five Seconds』Brass ver.。インストゥルメンタル版はこちら。 【JAZZ】A…

『ラブライブ!The School Idol Movie』マイルドヤンキー的「今の私たち賛美」

『ラブライブ!』 は一貫して「仲間主義」である。第1期では、ことりは個人の夢を追いかける為に地域の仲間を切り捨て留学しない。第2期では、μ'sは「今の9人」が最高であるから、先輩を送り出して新入生を迎え入れない。ただμ'sは「今の私たち」を賛美す…

マイルドヤンキーの「地域&仲間主義」は貧困起因

マイルドヤンキーは地元&仲間愛が強い。これが現在のマイルドヤンキーへのイメージだが、それは何故なのか?大きな要因は地方の低賃金、低所得だ。この2つで、一般的に挙げられるマイルドヤンキーの特性は説明がつく。 1.マイルドヤンキーの概要 一般的に…

『新宿スワン』原作に糾弾される“他人事”を吐く映画

歌舞伎町はヒーローになれない街である。少なくとも、スカウトには。映画版『新宿スワン』は、「スカウト業に必然的に宿る陰」……「女性の人生を破綻させる大きな可能性」を“見て見ぬ振り”している。その為に、「スカウト業に必然的に宿る陰」を緻密に描いた…