人間の論理と直観〜うんこカレーに潜む二重過程モデル〜

人間は「直観」から逃げられない。幾ら論理的であるとされる「推論システム」のみで思考しようと努めても、“理屈に合わない”と感じる行動を促す「直観システム」には抗えない。それをカレー&うんこで説明します。(本文1,767字) 1.カレーとうんこカレー 「…

名探偵コナン 業火の向日葵★★★コナンの劣化

コナンのネタまとめ感想。全ネタバレ。 (本文2,275文字) 【NY編】 「その名も7人のサムライ…!圭子アンダーソン!宮台 なつみ!東幸二!石嶺泰三!チャーリー!」←チャーリーさんだけ苗字が無くて可哀想 飛行機での誰得な百合 【空港編】 予告編で流れた…

『フォックスキャッチャー』隣人を壊す完璧ヒーロー

殺人動機は「ヒーローがヒーローだったから」だ。完璧なアメリカン・ヒーローが男を狂わせる。もちろんヒーローは悪くない。彼は仕事も家庭も完璧な男で、正にアメリカが誇る「アメリカの英雄」。それ故に「ヒーローになりたくてなれなかった男」は狂ってゆ…

『セッション』梶原一騎イズムの異常者バトル

梶原一騎テイストの「異常者vs.異常者」映画である。実際とは異なった音楽描写も、なんだか「いい話」風に終わるハラスメント描写も、梶原一騎『巨人の星』系統と捉えればそう気にならない。才の無い異常者・指導者と、才のある異常者・生徒が出逢い、“偶然”…

『劇場版ドラゴンボールZ 復活の「F」』悟飯とフリーザが弱いわけ

「戦闘狂」たちの物語となった新生『ドラゴンボール』で、戦闘狂・孫悟空が「弱点」を克服する話だ。『ドラゴンボール』は、2010年代に入って【善vs.悪のヒーローもの】の冠を捨て【戦闘狂バトルもの】にアップデートされた。その中で「ヒーロー」である…

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』アメコミファンも批評家も愛のビギナー

「大衆作品vs.芸術作品」構図ではないと考える。知識不足の商業主義業界人やアメコミ映画偏重傾向の描写が目立つが、それらの「ハリウッドの問題」を描く中で、芸術志向者たちの矛盾と「ブロードウェイの問題」も描いている。人間のエゴを主体に描きながら、…

『博士と彼女のセオリー』崩壊した"円"と現代に残る"直線"

最初からすれ違っている夫婦の話である。画面に着目すると、とにかく「円」が多い映画で、その暗喩は執拗な程に出現する。…ブラックホール、螺旋階段、瞳孔、コーヒー、夫婦の戯れ、チョーク、池作り、車椅子の周回、ボール、模型、電球、メリーゴーラウンド…

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』ミセス・ロビンソンに火炙りを

病理に満ちた映画である。劇中描かれるのは、過激な宣伝から想起される『マイ・フェア・レディ』のような"古典的"恋愛関係ではない。クリスチャン・グレイは、オールド・カーが好きと言う恋人の愛車を勝手に売り払い、ピカピカの高級車を押し付けるような男…

US-Diva版『ファーストクラス』を考える

ハリウッド版『ファーストクラス』に続き、US-Diva編キャスティングです!! 動物園ばりのマウンティング合戦がデフォなので、女優連と違って5秒で決まりました!! 余談として、1期で枠内最高視聴率を叩きだした『ファーストクラス』は何故2期で低視聴率…

ハリウッド版『ファーストクラス』を考える

みんな、『ファースクラス』見てますか!?見てたら視聴率がワースト・クラスになりませんね!!貫禄な愛すべきクソドラマが損益計算書的に考えて「終幕」を迎えてしまうので、ハリウッドver.の『ファーストクラス』を考えました☆ DIVA版もあるよ! 1.『フ…

親愛なる我が総統/弱さとしての排外主義 〈劇団チョコレートケーキ2014.9.13〉

ーー「私もまた一人の心を持つ人間であった。」 1.概要 『親愛なる我が総統』の舞台は、第二次世界大戦終結直後のポーランド裁判所。ナチスドイツのアウシュビッツ収容所初代所長ルドルフ・フェルディナント・ヘースを裁く為、尋問を行っている。ほぼ死刑は…

『クロニクル』まるで少年犯罪ルポ

SF映画なのに、少年犯罪ルポのよう。恐ろしい程のリアリティを感じてしまった。 1.虐待と相関する転落 無職の父親は暴力を振るう。母親は重い病気で、優しいけれど息子に「強くなってほしい」と懇願する。のにちそれが呪詛になる。 こんな家庭環境の上、学…

将来のことを考える為の物質・セロトニン

1.何故自殺する人は非合理的選択である死を選ぶの? ブラック労働による自死。悲しいことに他ならないわけですが…。その報道の際に対し、このような声が散見される。「生きる為に金を稼いでいるんだから死ぬぐらいなら会社を辞めた方が合理的だ」。つまり…

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』主人公になれないディカプリオ

レオナルド・ディカプリオという俳優は「いつも主人公になれない」気がする。 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。欲に取り憑かれヒトでなくなった男は、狼にも牛にもなれず、地を這うミミズ以下の存在となる。墜落への道筋は丸刈り狂乱の時点で下されて…

『もらとりあむタマ子』彼女が無職なワケ

映画『ロスト・イン・トランスレーション』は「尻」から始まる。背中とパンツだけで「孤独」を表した名タイトルバックだ。本作もまた、主人公の初登場シーンは「尻」。都内高級ホテルの整ったベッドに居たスカーレット・ヨハンソンと異なり、前田敦子が寝そ…

『そして父になる』アダルト・チルドレン脱出の成功譚

「父の呪縛に囚われていた主人公がアダルト・チルドレンを脱却し孤独じゃなくなる話」である。又、それに伴う「家族の再生」が描かれている。同 じくカンヌで賞を授かった『ツリーオブライフ』『トウキョウソナタ』に似ている。文学的に言うと「父殺し」の物…

『ヒックとドラゴン』とブルーオーシャン戦略

「竜の狩猟」がアイデンティティとなっているバイキング集落に住む気弱な少年ヒックは、自ら発明した武器で伝説のドラゴンを撃つ。偉大なバイキングである父に「弱い男」烙印を押される彼は、仕留めたドラゴンを手当し、なんと仲良くなってしまう…。 伝説の…

シャーリーズ・セロンは何故『モンスター』を演じたのか?

美人女優シャーリーズ・セロンは、何故あそこまでの身体改造を行い連続殺人犯を演じたのか?それは彼女が『モンスター』の主人公に共感したからではないだろうか。セロンはアイリーン役についてこう語る。 映 画『モンスター』のアイリーンとラヴェンナは、…

貧困が生んだシリアル・キラー 映画『モンスター』に見る文化資本

「ジャンク・フードより自炊の方が結果的に安くつく」 「お金が無くても新聞売りや奨学金を用いれば進学が出来る」 …なのに、貧困層の人々は何故そのような「選択」をしないのか?それはその人間が、怠惰だからだ。… このような声はよく挙がるが、そもそもそ…

『サラの鍵』過去を知らなければ、未来は作れない。

『最強のふたり』はフランス映画らしく、実話・障碍・格差を扱いながらも「感動しろ」という演出を最後まで行わなかった。本作はそんな映画だ。 『ザ・マスター』はある種戦争の映画であった。「戦争」は終戦調印しただけでは終わらない。世界大戦に勝っても…

『ザ・マスター』ミイラ取りがミイラに、信者が教祖に

「観終わったあと、ただ楽しかった、笑えた、泣けたなどと一言で終わらせられる映画は劇場で見る価値が無い」この言葉を是とするのならば、この上なく高尚な作品。 新興宗教サイエントロジーがモデルの本作。その開祖のロナルド・ハバードにあたるのは、フィ…