映画

『アナと雪の女王2』 前線に来る無能力キャラ問題

今できる正しいことをする 一歩ずつ繰り返して それが今の私にできる正しいことなのだから ("Next Right Thing") 関心した点。今回のアナは、フィクションでウザい定型とされる「異能力が無いのに前線に来ようとするキャラ」枠なのだが、劇中エルサと共感性…

『パラサイト』種明かし&考察集

映画『パラサイト 半地下の家族』、ポン・ジュノ監督が明かす種明かし、および筆者とオンラインの考察をリストアップ。走り書きな上、韓国語ソースはredditに投稿された英訳を参照しているため、信頼度は低いです。※ 監督側よりネタバレ禁止令が轢かれている…

映画『ジーザス・イズ・キング』 IMAXゴスペル礼拝体験

これは俺に関するフィルムじゃない。礼拝の映画──ユニバーサルなものだ - カニエ・ウェスト 同名アルバムにあわせた40分程度のIMAXムービー。カニエ・ファンはもちろん、新しいかたちの「劇場体験」を求める人にもオススメしたいのですが、個人的に最も観て…

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』現代っ子通過儀礼

"A boy becomes man." 少年が大人になる。この慣用句と類似する言葉は、『スパイダーマン:ファー・フローム・ホーム』中、そしてジェイク・ジレンホールのインタビューで発せられている。“親愛なる隣人”にふりかかる困難と通過儀礼……『スパイダーマン』シリ…

『プラダを着た悪魔』虚栄のヴォーグ市

変な映画だ。2000年代最大のファッション映画であることは間違いない。世界中のファッション・アディクトたちのバイブルでもあるだろう。それなのに、この映画はファッションの虚栄をグロテスクにうつしだし、最後は靴やジャケットやベルト“なんか”への執着…

映画とTVの融合と『ビッグ・リトル・ライズ』、メリル・ストリープ (TIME Magazine)

コメント:アメリカの映画とTVドラマの距離感にまつわるTIME記事のメモです。内容をかいつまんでおり個人的解釈・文体も入れてるので、資料にはしないほうが良いです。 2017年、HBO『ビッグ・リトル・ライズ』により「映画は芸術/TVは格下」といった見方は…

チャイルディッシュ・ガンビーノ『Guava Island』の色と服

【※ ネタバレが含まれています】 ついに公開された映画『グアヴァ・アイランド(Guava Island)』。ラッパーとしてのペルソナ、チャイルディッシュ・ガンビーノのキャリアの終わりを「死」と表現していたドナルド・グローヴァーですが、その終焉を飾るにふさわ…

アートなホラー映画全盛期のハリウッド事情/ドラマ映画の凋落

2010年代末、アメリカ映画でホラーが最も熱いジャンルになっている。ヒットする上にアート映画としての評価も上々なのだ。2017年から2019年3月にかけて、boxoffice週末興行で首位を獲得した実写オリジナル7作品のうち5作がホラージャンル*1。なかでもジョー…

経済ホラーとしての『イット・フォローズ』白人の悪夢と黒人の廃墟

正体不明の “それ” に追いかけられるホラー映画『イット・フォローズ』のメインキャストは白人の子どもたちだ。それどこらか、作中おびただしく出現する “それ” すら白人ばかり。何故か。この映画の舞台がデトロイトだからだ。時代設定が意図的にあやふやに…

『天才作家の妻 40年目の真実』 A STAR IS BORN

『アリー/スター誕生』の新人女優レディー・ガガと2019年主演女優賞レースを争う作品だが、大女優グレン・クローズが14年かけて製作したこちらの映画こそ「スター誕生」と言うべき気迫がある。 【以下ネタバレ】 本作でスターが誕生するのは2回。1回目は…

『アリー/スター誕生』セカイ系恋愛の主役は誰?

*映画『アリー/スター誕生』寄稿一覧 『アリー/ スター誕生』米大絶賛の理由 2018年的刷新とレディー・ガガに重なる物語がポイント?|Real Sound|リアルサウンド 映画部 レディー・ガガ主演『アリー/ スター誕生』は「ポップ蔑視」なのか? - コラム : CI…

2018年メディア寄稿集

2018年、メディア媒体に掲載していただいた記事集となります。 ご依頼等、なにかご連絡がありましたら下記メールアドレスにお願い致します。 tatsumijunk@gmail.com 文春オンライン:女子高生の星が教えてくれた、SNS時代の破局の乗り越え方 SNS時代のアンセ…

『クレイジー・リッチ!』麻雀シーンの意味

RealSound様にて紹介させていただいた映画『クレイジー・リッチ!(Crazy Rich Asians)』。 非常に重要である麻雀シーンについて説明させていただいたのですが、本稿では更に踏み込んだネタバレ解説を致します。8牌の意味や座席位置など、基本的な解説は上記…

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』70s英雄譚と英雄の距離

1970年代初頭のアメリカといえばフェミニズム旋風である。ウーマンリブ運動の加熱。71年にヘレン・レディが『I Am Woman』をリリース。72年に雇用機会均等法が大幅に改正され、グロリア・スタイネムが雑誌『Ms.』を刊行。そして73年に「バトル・オブ・ザ・セ…

『マザー!』聖書メタファー解説/男女論ではなく社会派映画?

非難を呼んだ話題の問題作『マザー!』。ショッキングな暴力描写が展開される作は、アメリカの映画館出口調査CinemaScoreで5年ぶりのF評価を下された。どんな話かというと「夫婦の家にやってきた不審な来客を夫が招き入れつづけ妻が困惑する話」としか説明が…

『スパイダーマン:ホームカミング』の悪役はトランプ支持者?

『スパイダーマン:ホームカミング』の悪役が「トランプ支持者のよう」と話題だ。Rolling StoneもLA TimesもVultureも、同作のヴィラン・ヴァルチャーをトランプ政権と絡める記事を出している。その理由には、今日のアメリカ世論の一部を形作る「怒り」が存…

『オブセッション 歪んだ愛の果て』レモネード創世記

2009年イドリス・エルバ主演作。あのビヨンセが準主演キャストに加わったDIVAムービーである。 ストーリーは不倫サスペンス。会社役員を務めるリッチなエルバは、職場の華だったビヨンセと結婚。ビヨンセは妊娠を機に専業主婦となり、進学を視野に入れながら…

ドキュメンタリー『くすぐり』の皮肉な後日談

Netflix配信ドキュメンタリー『くすぐり』の後日談を紹介、本作の誇張された演出の疑惑も

『パッセンジャー』の改変されたオリジナル版ラスト / 強姦神話としての眠り姫からアダムとイヴへ

映画『パッセンジャー』のラストは大きな論争を呼んだ。実は、この作品の脚本は多くのアカデミー作品賞&候補作を輩出したブラック・リストに入っていた。そして、その栄誉あるオリジナル脚本のエンディングは公開されたリリース版と大きく異なっていた。本…

『この世に私の居場所なんてない』 世界からくだらないと扱われる私の大切なもの

サンダンス映画祭審 査員対象受賞作 Netflix独占配信 その日の主人公は嫌なことだらけだった。看護助手をしている治療施設で、患者の老婆が抗議運動をする黒人のニュースを見てこう言った。「あいつらがアメリカを蝕んでる、あいつらのデカいチンコは絶対に…

母なる証明 破壊される母の偶像

映画『母なる証明』は現実社会が抱く“母親偶像”を壊そうとする。しかしながら、映画の中では“母親”の持つ息子偶像が変容してゆく。 いわば現実と作中、合わせて2つの「母の偶像」に亀裂が入るのである。 【目次】 破壊される「社会」の「母親」偶像 崩壊し…

バッドママ / 大ヒットしたニッチな王道コメディ

アメリカで大ヒットしたコメディ映画『バッドママ』がNetflixでリリースされた。題名通り「バットな母親」をテーマにしたR指定コメディだが、この作品のヒットには少し特殊な面が存在する。本記事では『バッドママ』の映画産業におけるニッチな商業的成功、…

ジョイ/銃をとったシンデレラ

実在の発明家を描いた映画であるが、まるでシンデレラのようなおとぎ話が志向されている。1980年代アメリカのシンデレラはハンサムな王子様は求めない。男性社会の中で契約相手を探し、魔法使いに資金を求め、銃をとるのだ。 【目次】 【目次】 1.シンデレ…

名探偵コナン 純黒の悪夢★★★ミステリ消失

『名探偵コナン』と題される本作のジャンルはミステリのはずだが、昨年度の失敗の為かミステリ要素が極限まで排除されアクション映画と化している。 【目次】 ミステリを廃した『劇場版名探偵コナン』 ネタ感想 1.ミステリを排した『劇場版名探偵コナン』 …

ビヨンセが『スター誕生』主演を切望した3つの推定理由:共通する音楽キャリア、思想、恋愛

2016年3月、1976年版『スター誕生』リメイク映画からビヨンセが降板した噂が報じられた。2011年時点の監督はクリント・イーストウッド、それが頓挫したのちの2015年にブラッドリー・クーパー監督説が浮上したプロジェクトである。4、5年に及ぶ交渉期間を…

ウォーリアー★★★テアゲネスと白鯨とベートーヴェン

映画『ウォーリアー』の父と兄弟はそれぞれメタファーを背負っている。弟は英雄テアゲネス、父は『白鯨』、そして兄はベートーヴェン。この3つのメタファーから三者を考察する。 【目次】 弟テアゲネスが本当に欲しかったもの 白鯨と闘う父 ベートーヴェン…

『ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション』イラク戦争のメディア戦略

『ハンガー・ゲーム』はメディアの物語だ。メディアに纏わり付かれた主人公カットニス・エヴァディーンは「ヒーロー」ではなく「広告塔」、そして「戦争の被害者」である。イラク戦争を発端に開始された本シリーズは巧みに「戦争下のメディア戦略」を描き、…

何がジェーンに起ったか?★★★★★いい子になれたジェーン

『何がジェーンに起ったか?』において“起ったこと”は、尊大であったベイビー・ジェーンが“いい子になれたこと”である。序盤と終盤シーンの類似はその変化を表している。 又、姉妹間には嫉妬の他に互いの罪悪感が大きく介在している。その為、単純に「姉妹間…

国家ある絶望『タクシードライバー』と国家なき夢『ナイトクローラー』:70年代ナショナリズムと10年代キャピタリズム

『ナイトクローラー』と『タクシードライバー』を比較することで1970年代と2010年代のアメリカ社会の違いを考察する。こちらのサイトにあるように、2作は多くの共通点を持つ。車に乗る夜の仕事、鏡、孤独な一人暮らし、ダイナー、年齢差ある年齢……。そして…

『ナイトクローラー』経済映画としての失敗、エンタメ寓話としての成功

『ナイトクローラー』は今日の資本主義システムを提示する映画だ。社会派、経済映画として作られた。監督側が最も表現したい物は主人公ルーではなく、ルーを産み出す今日の資本主義システムなのだ。だからカメラはルーを野生動物のように映す。まるで、野生…