辰巳JUNKエリア

ニワカを極めるブログ

映画

『スパイダーマン:ホームカミング』の悪役はトランプ支持者?

『スパイダーマン:ホームカミング』の悪役が「トランプ支持者のよう」と話題だ。Rolling StoneもLA TimesもVultureも、同作のヴィラン・ヴァルチャーをトランプ政権と絡める記事を出している。その理由には、今日のアメリカ世論の一部を形作る「怒り」が存…

『オブセッション 歪んだ愛の果て』レモネード創世記

2009年イドリス・エルバ主演作。あのビヨンセが準主演キャストに加わったDIVAムービーである。 ストーリーは不倫サスペンス。会社役員を務めるリッチなエルバは、職場の華だったビヨンセと結婚。ビヨンセは妊娠を機に専業主婦となり、進学を視野に入れながら…

ドキュメンタリー『くすぐり』の皮肉な後日談

Netflix配信ドキュメンタリー『くすぐり』の後日談を紹介、本作の誇張された演出の疑惑も

『パッセンジャー』の改変されたオリジナル版ラスト / 強姦神話としての眠り姫からアダムとイヴへ

映画『パッセンジャー』のラストは大きな論争を呼んだ。実は、この作品の脚本は多くのアカデミー作品賞&候補作を輩出したブラック・リストに入っていた。そして、その栄誉あるオリジナル脚本のエンディングは公開されたリリース版と大きく異なっていた。本…

『この世に私の居場所なんてない』 世界からくだらないと扱われる私の大切なもの

サンダンス映画祭審 査員対象受賞作 Netflix独占配信 その日の主人公は嫌なことだらけだった。看護助手をしている治療施設で、患者の老婆が抗議運動をする黒人のニュースを見てこう言った。「あいつらがアメリカを蝕んでる、あいつらのデカいチンコは絶対に…

母なる証明 破壊される母の偶像

映画『母なる証明』は現実社会が抱く“母親偶像”を壊そうとする。しかしながら、映画の中では“母親”の持つ息子偶像が変容してゆく。 いわば現実と作中、合わせて2つの「母の偶像」に亀裂が入るのである。 【目次】 破壊される「社会」の「母親」偶像 崩壊し…

バッドママ / 大ヒットしたニッチな王道コメディ

アメリカで大ヒットしたコメディ映画『バッドママ』がNetflixでリリースされた。題名通り「バットな母親」をテーマにしたR指定コメディだが、この作品のヒットには少し特殊な面が存在する。本記事では『バッドママ』の映画産業におけるニッチな商業的成功、…

ジョイ/銃をとったシンデレラ

実在の発明家を描いた映画であるが、まるでシンデレラのようなおとぎ話が志向されている。1980年代アメリカのシンデレラはハンサムな王子様は求めない。男性社会の中で契約相手を探し、魔法使いに資金を求め、銃をとるのだ。 【目次】 【目次】 1.シンデレ…

名探偵コナン 純黒の悪夢★★★ミステリ消失

『名探偵コナン』と題される本作のジャンルはミステリのはずだが、昨年度の失敗の為かミステリ要素が極限まで排除されアクション映画と化している。 【目次】 ミステリを廃した『劇場版名探偵コナン』 ネタ感想 1.ミステリを排した『劇場版名探偵コナン』 …

ビヨンセが『スター誕生』主演を切望した3つの推定理由:共通する音楽キャリア、思想、恋愛

2016年3月、1976年版『スター誕生』リメイク映画からビヨンセが降板した噂が報じられた。2011年時点の監督はクリント・イーストウッド、それが頓挫したのちの2015年にブラッドリー・クーパー監督説が浮上したプロジェクトである。4、5年に及ぶ交渉期間を…

ウォーリアー★★★テアゲネスと白鯨とベートーヴェン

映画『ウォーリアー』の父と兄弟はそれぞれメタファーを背負っている。弟は英雄テアゲネス、父は『白鯨』、そして兄はベートーヴェン。この3つのメタファーから三者を考察する。 【目次】 弟テアゲネスが本当に欲しかったもの 白鯨と闘う父 ベートーヴェン…

ハンガー・ゲーム FINAL: レボリューション★★★★イラク戦争のメディア戦略

『ハンガー・ゲーム』はメディアの物語だ。メディアに纏わり付かれた主人公カットニス・エヴァディーンは「ヒーロー」ではなく「広告塔」、そして「戦争の被害者」である。イラク戦争を発端に開始された本シリーズは巧みに「戦争下のメディア戦略」を描き、…

何がジェーンに起ったか?★★★★★いい子になれたジェーン

『何がジェーンに起ったか?』において“起ったこと”は、尊大であったベイビー・ジェーンが“いい子になれたこと”である。序盤と終盤シーンの類似はその変化を表している。 又、姉妹間には嫉妬の他に互いの罪悪感が大きく介在している。その為、単純に「姉妹間…

国家ある絶望『タクシードライバー』と国家なき夢『ナイトクローラー』:70年代ナショナリズムと10年代キャピタリズム

『ナイトクローラー』と『タクシードライバー』を比較することで1970年代と2010年代のアメリカ社会の違いを考察する。こちらのサイトにあるように、2作は多くの共通点を持つ。車に乗る夜の仕事、鏡、孤独な一人暮らし、ダイナー、年齢差ある年齢……。そして…

『ナイトクローラー』経済映画としての失敗、エンタメ寓話としての成功

『ナイトクローラー』は今日の資本主義システムを提示する映画だ。社会派、経済映画として作られた。監督側が最も表現したい物は主人公ルーではなく、ルーを産み出す今日の資本主義システムなのだ。だからカメラはルーを野生動物のように映す。まるで、野生…

わたしに会うまでの1600キロ★★★★立派すぎた助手席の娘

ダメ人間讃歌ではない。「立派すぎた母と駄目な娘の物語」でもない。主人公の凋落は、「立派すぎた母と娘ゆえの悲劇」だ。自分の人生の運転席に座れなかった母親と同じく、主人公もまた「母の立派な娘」という助手席に乗り続けていた。1,600キロの横断は、彼…

『羊たちの沈黙』レクター博士とクラリスが触れ合うシーンの元ネタ:殺人鬼と尼僧見習いの洗礼

トマス・ハリス『羊たちの沈黙』の登場人物であるハンニバル・レクターは複数の実在殺人鬼のモデルを持つ。その中の1人が、獄中からFBI捜査に参画した連続殺人鬼ヘンリー・リー・ルーカスである。平山夢明『異常快楽殺人』によると、どうやらこのヘンリーは…

『グローリー/明日への行進』反差別ゲーム

"LoveWins"。2015年6月26日、アメリカ合衆国全州において同性婚が合法化された。この可決に大きく寄与したのは世論変化だ。WSJ紙によると、1990年時点ではアメリカ人の8人中7人が「同性愛は正しくない関係」と見なしていた。2004年にしても同性婚支持率は…

『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』親殺しと子殺しの同居

まるで婿舅ドラマである。カイル・リースはT-800に「サラ・コナーの婿に相応しいか」審査されているような絵面。そんな家族的物語の印象を残す本作は、タイムトラベルによって多くの「親殺し」と「子殺し」を発生させている。非常に複雑な関係性に注目すると…

『ラブライブ!The School Idol Movie』マイルドヤンキー的「今の私たち賛美」

『ラブライブ!』 は一貫して「仲間主義」である。第1期では、ことりは個人の夢を追いかける為に地域の仲間を切り捨て留学しない。第2期では、μ'sは「今の9人」が最高であるから、先輩を送り出して新入生を迎え入れない。ただμ'sは「今の私たち」を賛美す…

『新宿スワン』原作に糾弾される“他人事”を吐く映画

歌舞伎町はヒーローになれない街である。少なくとも、スカウトには。映画版『新宿スワン』は、「スカウト業に必然的に宿る陰」……「女性の人生を破綻させる大きな可能性」を“見て見ぬ振り”している。その為に、「スカウト業に必然的に宿る陰」を緻密に描いた…

名探偵コナン 業火の向日葵★★★コナンの劣化

コナンのネタまとめ感想。全ネタバレ。 (本文2,275文字) 【NY編】 「その名も7人のサムライ…!圭子アンダーソン!宮台 なつみ!東幸二!石嶺泰三!チャーリー!」←チャーリーさんだけ苗字が無くて可哀想 飛行機での誰得な百合 【空港編】 予告編で流れた…

『フォックスキャッチャー』隣人を壊す完璧ヒーロー

殺人動機は「ヒーローがヒーローだったから」だ。完璧なアメリカン・ヒーローが男を狂わせる。もちろんヒーローは悪くない。彼は仕事も家庭も完璧な男で、正にアメリカが誇る「アメリカの英雄」。それ故に「ヒーローになりたくてなれなかった男」は狂ってゆ…

『セッション』梶原一騎イズムの異常者バトル

梶原一騎テイストの「異常者vs.異常者」映画である。実際とは異なった音楽描写も、なんだか「いい話」風に終わるハラスメント描写も、梶原一騎『巨人の星』系統と捉えればそう気にならない。才の無い異常者・指導者と、才のある異常者・生徒が出逢い、“偶然”…

『劇場版ドラゴンボールZ 復活の「F」』悟飯とフリーザが弱いわけ

「戦闘狂」たちの物語となった新生『ドラゴンボール』で、戦闘狂・孫悟空が「弱点」を克服する話だ。『ドラゴンボール』は、2010年代に入って【善vs.悪のヒーローもの】の冠を捨て【戦闘狂バトルもの】にアップデートされた。その中で「ヒーロー」である…

『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』アメコミファンも批評家も愛のビギナー

「大衆作品vs.芸術作品」構図ではないと考える。知識不足の商業主義業界人やアメコミ映画偏重傾向の描写が目立つが、それらの「ハリウッドの問題」を描く中で、芸術志向者たちの矛盾と「ブロードウェイの問題」も描いている。人間のエゴを主体に描きながら、…

『博士と彼女のセオリー』崩壊した"円"と現代に残る"直線"

最初からすれ違っている夫婦の話である。画面に着目すると、とにかく「円」が多い映画で、その暗喩は執拗な程に出現する。…ブラックホール、螺旋階段、瞳孔、コーヒー、夫婦の戯れ、チョーク、池作り、車椅子の周回、ボール、模型、電球、メリーゴーラウンド…

『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』ミセス・ロビンソンに火炙りを

病理に満ちた映画である。劇中描かれるのは、過激な宣伝から想起される『マイ・フェア・レディ』のような"古典的"恋愛関係ではない。クリスチャン・グレイは、オールド・カーが好きと言う恋人の愛車を勝手に売り払い、ピカピカの高級車を押し付けるような男…

『クロニクル』まるで少年犯罪ルポ

SF映画なのに、少年犯罪ルポのよう。恐ろしい程のリアリティを感じてしまった。 1.虐待と相関する転落 無職の父親は暴力を振るう。母親は重い病気で、優しいけれど息子に「強くなってほしい」と懇願する。のにちそれが呪詛になる。 こんな家庭環境の上、学…

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』主人公になれないディカプリオ

レオナルド・ディカプリオという俳優は「いつも主人公になれない」気がする。 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』。欲に取り憑かれヒトでなくなった男は、狼にも牛にもなれず、地を這うミミズ以下の存在となる。墜落への道筋は丸刈り狂乱の時点で下されて…