私的VMA最優秀賞ビデオ商業部門 Taylor Swift 『Blank Space』/Mark Ronson ft. Bruno Mars 『Uptown Funk』/Nicki Minaj ft. Beyoncé 『Feeling Myself』
2015 MTV Video Music Awardsが揺れた。ニッキー・ミナージュとテイラー・スウィフトの会話が大きな話題となったが、実はニッキーが声を挙げる前からノミネートへの疑問の声は多く挙がっていた*1。ノミネート・リストはこちら。商業主義なら、何故One Directionや、EW.comが挙げた人気作品群をスルーした?批評重視ならば、The Guadianが指摘するように、『Bad Blood』『Thinking Out Loud』をはずして入れるべき有名作品があるはずだ。何はともあれ、今年のVideo Music Awards(以下「VMA」表記)のラインナップはあらゆる方面で少し肩透かしなのだ。
VMAは基本的に商業、セールス、視聴者数主義寄りのアワードである。しかし今回は政治、批評的に評価されたKendrick Lamarもノミネートしている。ということで、賞の基本的姿勢&今年度の選出傾向を鑑み、商業部門&政治部門に分け、個人的なVMA年間最優秀賞6作品を選出した。本記事では商業部門を記載する。
私的 VMA YEAR OF VIDEO
【商業部門】
Taylor Swift 『Blank Space』/好意だけは否定しない人
Mark Ronson ft. Bruno Mars 『Uptown Funk』/音楽を楽しめ
Nicki Minaj ft. Beyoncé 『Feeling Myself』/資本主義の女王
(集計期間2014年7月7日~2015年7月1日)
Taylor Swift 『Blank Space』好意だけは否定しない人
*1:EW.com「MTV VMAに冷遇された8つのビデオ」が投稿されたのはニッキのツイート以前である
リアーナ『Bitch Better Have My Money』が明示したフェミニズムと人種差別の衝突/暴力の時代とブラックスプロイテーション映画の復活
2015年7月1日にリリースされたリアーナ『Bitch Better Have My Money(以下BBHMM表記)』が議論を巻き起こしている。動画冒頭で告知されるように、未成年禁止レイティングで、性的かつ暴力的な映像が続く。ここまで過激なら議論が生じても不思議ではないが、論点となったのはフェミニズムと人種問題であった。衝突の結果、米英の政治系大手メディアに限れば肯定派が優勢寄り。それは何故なのか?英語圏フェミニズムおよびアメリカ社会の人種差別問題に絡めて考察する。
【目次】
- ビデオ概要
- 主な議論
- 否定派と肯定派の人種構成
- フェミニズムにおける人種差別問題
- アメリカ社会の人種差別問題
- 『BBHMM』が反映する暴力の時代の政治パワーバランス
- 現代版ブラックスプロイテーションである『BBHMM』
1.ビデオ概要
ストーリー:リアーナとその仲間は豪邸に住む金髪白人女性を誘拐し、裸での逆さ吊り/ドラッグ責め/プール沈め等で拷問を加える。その最中、リアーナは誰かに電話し激怒する。リアーナの口座残高はみるみる減っていく。実は通話相手は誘拐された女性の夫である白人会計士。彼は妻が拐われた事をリアーナから告げられながら、リアーナの金で娼婦たちと豪遊していた。まだ息のある会計士の妻と共に豪邸に舞い戻ったリアーナが男性会計士を惨殺し、金を取り戻して終わる
2.主な議論
続きを読む危険ドラッグ業の概要 暴力団&中国との関係 謎の北朝鮮
一ヶ月で15人の使用者を死に至らしめた「ハートショット」事件から少し経ち、日本の危険ドラッグは衰退フェーズに入ったらしい。厚労省麻薬取締部が法的拘束を強めた為、「逮捕されやすい犯罪」を避ける半グレ集団たちが撤退した。これが本当なら日本は「世界で唯一危険ドラッグ撲滅に成功した国」となる。そんな中で溝口敦『危険ドラッグ 半グレの闇稼業』が概要をまとめており、面白いネタも多かったので紹介する。
- ケーキを作るくらい簡単な危険ドラッグ製造販売
- メーカーも店員も素人で危険ドラッグ未経験
- 暴力団の覚醒剤ビジネスとは衝突しない
- 日本側より偉い中国化学企業
- 北朝鮮は危険ドラッグ流通量が高い
- 危険ドラッグ潰しに成功した日本
1.ケーキを作るくらい簡単な危険ドラッグ製造販売
続きを読む『グローリー/明日への行進』反差別ゲーム
"LoveWins"。2015年6月26日、アメリカ合衆国全州において同性婚が合法化された。この可決に大きく寄与したのは世論変化だ。WSJ紙によると、1990年時点ではアメリカ人の8人中7人が「同性愛は正しくない関係」と見なしていた。2004年にしても同性婚支持率は3分の1。ここから大きな上昇を見せ、2015年には同性婚全州合法化を望む回答者が約57%となった。この世論の変動には様々な要因が挙げられる。カミングアウトの増加、メディア効果、SNSの普及、民主党の施策……。その中に"LoveWins"というスローガンも含まれる。最高裁可決の際にインターネットに飛び交い、オバマ大統領まで用いたこの言葉は、そのまま「愛は勝つ」というメッセージだ。この言葉に沿った場合、同性婚合法化が否決されると「愛は負けた」こととなる。LGBT問題に大きな関心を寄せてない人々も「愛が負ける」と聞くと「勝ってほしい」と考えがちだ。自分の大切にしている「愛」まで否定された気分になるから。"LoveWins"という同性婚肯定派によるスローガンは、「世論を形成する無関心な人々」を「味方側」に導く、簡潔で強力な"戦術"である。実は、『グローリー/明日への行進』のマーティン・ルーサー・キング・ジュニアも同様の手法を用いている。
続きを読むデスノート(B)キラに殺されるキラ/ど根性ガエル(A)サザエさん時空vs.現実
『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』親殺しと子殺しの同居
まるで婿舅ドラマである。カイル・リースはT-800に「サラ・コナーの婿に相応しいか」審査されているような絵面。そんな家族的物語の印象を残す本作は、タイムトラベルによって多くの「親殺し」と「子殺し」を発生させている。非常に複雑な関係性に注目すると、ある1つの家族観が見えてくる。