【王道の新時代】 2020年スーパーボウル・ハーフタイムショー:シャキーラ&ジェニファー・ロペス
ボロボロだったハーフタイムショー
スーパーウーマン新時代
派手さは約束されていたシャキーラ&ジェニファー・ロペスの公演は大成功。まさに大勢が求めている「王道」だったわけですが、実はこれ、同時に「革新」的なハーフタイムショーでもありました。まず、2000年代に盛んだった「スター・アンサンブル」方式と2010年代的な「ソロ・スター」式が上手い具合にフュージョン。40代と50代の女性スターがおなじラテン・ルーツの若手男性ラッパーをゲストに呼ぶあたりも良かったですね。
シャキーラのラテン、中東、セクシュアリティ
まずシャキーラ。正真正銘グローバルなラテン・コミュニティを代表する彼女はコロンビア出身。ハイライトに使われた『Hip's Don't Lie』は今でこそ代表曲ですが、2006年リリース当時は「絶対アメリカのラジオでかけられない」と反対されたクンビアでラテンなサウンド。アメリカの多数派、つまりは白人層の価値観(とされるもの)に迎合せず首位に立ってみせた重要なポピュラー・ソングです。つまり、シャキーラって、アメリカからすれば「US市場でカリビアン・サウンドが受容されると証明したアーティスト」で、カーディB等が活躍する道を作ったポップスターと評される存在なんですね。
ハーフタイムショーにおいてもシャキーラは「アメリカ多数派とされる白人層」におもねることなきパフォーマンスを披露しました。ラテンのみならず中東ルーツも発揮するロープ・ダンスがその筆頭。Voxが書くように、ジャネット・ジャクソンの悲劇以降、15年ものあいだスーパーボウルで封印されていた「女性の内なるセクシュアリティ表現」としても革新的でした(マドンナとかビヨンセもセクシーと言えますが、どちらかというとアスレチックなので)。バイラルになった舌の動きも“Zaghrouta”と呼ばれるアラビアンの表現スタイルらしいです。
everyone is making fun of this but it’s a traditional arabic celebration chant, referred to as “zaghroota” pic.twitter.com/CP7XgY9dk2
— Rawan (@rawan) 2020年2月3日
ジェニファー・ロペスのリプリゼント
Thank you to my incredible team for the most epic halftime I could have ever imagined. I love you guys so much #SBLIV #SuperBowlLIV #PepsiHalftime pic.twitter.com/sRCDxaWhRp
— Jennifer Lopez (@JLo) 2020年2月3日
注目されたことは、ジェニファーが纏う旗がアメリカ合衆国でありプエルトリコでもあること。2つとも彼女のルーツであるため『Jenny From The Block』より連なるレプレゼンテーションなわけですが、当然、国民的番組のスーパーボウル中継で行うからこその大きな意味を持ちます。曲名にかけて「騒いで、ラティーナ!」と叫んだあと「我らはアメリカ生まれ」と熱唱。軽視されがちなプエルトリカンも含めてラティーノ・プライドを訴える、スーパーボウルとしてはかなり濃いマイノリティ・ルーツ発信と言えます(2016年ビヨンセ2017年レディー・ガガが話題になったと言え、同ショーの定番ポリティカル表現って「国民的」とばかりに米軍賞賛や世界平和に偏るので)。当日、国歌斉唱で起立せずに一悶着あったジェイ・Zも、コロンビアンのシャキーラとプエルトリカンのジェニファーのステージこそ「最大のプロテスト」と評してますね。
王道でありながら革新
・メドレーふくめたセットリスト再現プレイリスト
・ラジオ出演情報
http://radiko.jp/#!/ts/BAYFM78/20200208030000
2/7(金)27:00放送、blockfm『MUSIC GARAGE : ROOM 101』にて渡辺志保さんと ジェニファー・ロペス出演映画『ハスラーズ』を語ります! USストリップ事情や劇中流れるブリトニー・スピアーズ等の2000年代ヒット曲、キム・カーダシアン登場シーンなど盛り沢山。放送後1週間はradikoで聞けるようです。
・過去記事
政治的緊張が走るなか愛国心と問題提起のバランスをはかり称賛された2017年レディー・ガガによるハーフタイムショー評。