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バッドママ / 大ヒットしたニッチな王道コメディ

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 アメリカで大ヒットしたコメディ映画『バッドママ』がNetflixでリリースされた。題名通り「バットな母親」をテーマにしたR指定コメディだが、この作品のヒットには少し特殊な面が存在する。本記事では『バッドママ』の映画産業におけるニッチな商業的成功、そしてその希少さに反しメジャーな作品構成について解説する。

【目次】
  1. ニッチなのに大ヒット
  2. メジャーな映画構成

1.ニッチなのに大ヒット

男性主演の超大作に支配されたサマー・シーズンにこのような友情映画を観ることはなんたる喜びでしょう(映画評論家家 ロジャー・イーバート)

  引用元: Bad Moms Movie Review & Film Summary (2016) | Roger Ebert

  破天荒な母親たちのR指定コメディ『バッドママ』の大ヒットはなにが凄いのか? 本作品をマーケティング視点から特集したForbes記事を参考に要点をまとめた。

 【 映画 『バッドママ』ヒットの特異さ 】

  1. 2016年で初めて興行収入1億ドルを超えた女性主演のR指定映画
  2. ハリウッドで儲からないと扱われていた「母親をテーマにしたR指定コメディ」というニッチなジャンル映画
  3. 製作費もマーケティング費用も中規模
  4. 男性主演の超大作が多いサマーシーズンでのヒット 

 「母親をテーマにした女性中心のR指定コメディ」は映画業界で「儲からない」と扱われてきた要素の集合体である。しかしながら『バッドママ』は製作費2000万ドルにして世界興行収入1億7000万ドルを記録する大ヒットを記録した。しかも公開は7月末、男性主演の超大作が多いサマーシーズン真っ盛り。『バッドママ』は「女性主演のR指定コメディ」「母親テーマ」が商業的成功を納められることを立証しただけではない。「中規模予算映画」が「超大作映画」と共存しながらヒットできることも証明したのだ。以下を見てみよう。

【 7月〜8月公開 US興行収入1億ドル突破映画 】

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  アメリカ国内で興行収入1億ドルを超えた7〜8月公開映画一覧である(数値は12月26日時点)。表を見ると『バッドママ』の製作費が著しく低いことがわかる『バッドママ』とアニメ映画『ペット』を除いた6作品は1億ドル以上の予算を誇るアクション超大作である。又、女性が主演の作品は2作品。そのうちの『ゴーストバスターズ』は製作費が高く、7000万ドルの損失を計上したため続編は無いと報じられている*1。ゆえに、7〜8月公開作において興行収入1億ドルを突破し商業的にも成功した女性主演映画は『バッドママ』のみとなる。Forbesは本作が母親ブログで話題になったことを挙げ、その成功を「ハリウッドが無視していた客層をターゲットにした1億ドル突破」と題した*2

 『バッドママ』はハリウッドで「儲からない」とされてきた「母親テーマのR規制コメディ」で大ヒットを記録した。本作の成功は「R規制コメディ映画」や「女性中心映画」を作る人々に希望を与えるだろう*3。『バッドママ』自体もシリーズ化が決定しており、番外編となる『バッドパパ』、そして続編の製作が予定されている。さて、業界において特異とされる『バッドママ』だが、実は映画の作り自体は非常に王道である。

2.お約束な映画構成

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【※以下、ネタバレ感想】

  『バッドママ』の映画構成は非常に定番である。物語の構成は以下。

うまくいかない日常→出会い→変化→成功→大失敗→成長→大成功

 今日のUSコメディ映画では教科書のようになったこの流れを手厚く順当になぞっていく。いわゆる超テンプレ展開である。「過激で変人な仲間」は終盤で感動的な説得を行い、主人公を奮い立たせる。「1番おとなしく見える仲間」は狂気的な発言をするシュール・ポジションに落ち着く。中規模USコメディ映画にありがちな「本人役でゲスト出演する有名セレブリティ」も登場。音楽はフィフス・ハーモニー『Work From Home』やニッキー・ミナージュ『Hey Mama』などポップチャートど真ん中。USコメディ映画好きには伝わると思うが、『バッドママ』は「定番となったお約束な構成」で、業界的にはニッチな「母親たちの物語」を組み立てている。監督は『ハングオーバー!』シリーズで脚本を担当したジョン・ルーカスとスコット・ムーア。

 『バッドママ』は「定番となったお約束な構成」なだけあって展開は読める。しかしながら、個人的には「お約束」だからこそ映画を信頼しきって単純に楽しむことができる快作なのである。この信頼の成立要因にはキャスト陣も大きく影響している。特に主人公3人組だ。批評面で評価されたキャスリン・ハーンの熱演は勿論、目立ちすぎないクリスティン・ベルの熟練した技巧も相当なものだ。そして、主演のミラ・クニスは「世界一ホットな女優」にも関わらず「SEXがご無沙汰な子を持つダサい女性」にしか見えない。前章で述べたように『バッドママ』はUS映画産業において「R指定コメディ」、そして「女性中心映画」に光をもたらしうる映画である。それと同時に、才能あるコメディ役者たちの道筋も輝かせる秀才コメディだ。

Grade:B

参考資料

www.netflix.com

2016 Yearly Box Office Results - Box Office Mojo

'Bad Moms' Topped $100M By Targeting An Audience Hollywood Ignores

‘Bad Moms’ Crosses $100M at Box Office, Becomes STX’s First Hit | Deadline

Box Office: Why 'Bad Moms' Is Great News For STX Entertainment

'Bad Moms' Crosses $100M at U.S. Box Office | Hollywood Reporter

Ghostbusters' $70M-Plus Box Office Loss Means Sequel Unlikely | Hollywood Reporter

At The Movies, The Women Are Gone : Monkey See : NPR

Bad Moms (2016) - Rotten Tomatoes 

Mila Kunis is FHM's sexiest woman in the world - LA Times

大ヒットコメディ「Bad Moms」のスピンオフ「Bad Dads」製作へ : 映画ニュース - 映画.com

 (すべて2016年12月26日に受信)