『マザー!』聖書メタファー解説/男女論ではなく社会派映画?
非難を呼んだ話題の問題作『マザー!』。ショッキングな暴力描写が展開される作は、アメリカの映画館出口調査CinemaScoreで5年ぶりのF評価を下された。どんな話かというと「夫婦の家にやってきた不審な来客を夫が招き入れつづけ妻が困惑する話」としか説明ができない。男女の物語と考えると不快な印象を与えてくるが、本作はキリスト教の聖書をベースにした宗教暗喩の寓話だ。しかし、この作品を掘り下げると、単なる「宗教寓話」ではない。ダーレン・アロノフスキー監督の最終的な目標は「ある社会問題の提議」なのだ。張り巡らされた聖書のメタファーを紹介したのち、監督の発言を引用し“真の目的”に迫る。
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神KUSOスターアワード2017
神KUSO--Goddes Shit--それはマスメディアの年末振り返り記事でもクソのよつなネタとして掲載外に処されるセレブたちの咆哮。神KUSOスターアワードとは、そのようなクソ扱いを受けるものにこそスターたちの人間味が宿ると考え、その神秘性を真面目に讃える授与式である。政治の大変動によって多くの著名人が叫びをあげた2017年。本邦も神KUSOアワードでありながら社会問題に関連した授賞が相次いだ。そんな17年のエンパワ賞、フェイム賞、カップル賞とは--
【エンパワ賞】マライアキャリーのパネルが作られる
続きを読むついにパネルが作られてしまった pic.twitter.com/rdGpxxi53O
— キラー・トーア (@excursionz) 2017年7月31日
『信仰が人を殺すとき』アメリカの一夫多妻制の町と神聖な殺人
ジョン・クラカワーによるノンフィクション書籍。1984年にアメリカで起こった、一夫多妻制を「神聖な教義」とするモルモン原理主義者による殺人事件。犯人は動機を「神の啓示」だと語った。殺人を神聖な行為として語る男の裁判は、いつしか「信仰」をめぐる大きな論題に向かっていった……。まず、モルモン原理主義コミュニティであるアメリカの一夫多妻制の町の紹介から始める。
【目次】
- アメリカの一夫多妻制の町
- 神聖な殺人
- 「神の啓示」は「精神異常」か?
- 感想と補足
- 参考資料
アメリカの一夫多妻制の町
アメリカに一夫多妻制の町があることをご存知だろうか? それはアリゾナ州コロラドシティ、多妻結婚を神聖な教義だと信じるモルモン教原理主義者たちの自治市だ。多くの子供を産むことが女性の務めとされるこの町において、10人以上もの子供を産む女性も珍しくない。有名なモルモン原理主義教団FLDSがある町の2010年の年齢中央値は14歳足らず。つまり、住民の半数が14歳未満となる(米国平均は36.6歳)*1。元信徒の脱走者たちは、コロラドシティで児童レイプ、女性虐待が横行していたと告発している。少女が強制的に年長男性との結婚を命じられる文化があるのだという。町の指導者ルーロン・ジェフズの妻は推定75人、子どもの数は少なくとも65人。彼は80代のときに14歳または15歳の少女と結婚したとされている。
続きを読む『スパイダーマン:ホームカミング』の悪役はトランプ支持者?
『スパイダーマン:ホームカミング』の悪役が「トランプ支持者のよう」と話題だ。Rolling StoneもLA TimesもVultureも、同作のヴィラン・ヴァルチャーをトランプ政権と絡める記事を出している。その理由には、今日のアメリカ世論の一部を形作る「怒り」が存在する。
【目次】
- 「怒れる白人」トゥームス
- 「怒れる白人」としてのトランプ支持者像
- 世論を反映した「普通の人」トゥームス
- 参考文献
「怒れる白人」トゥームス
ヴァルチャーは、トランプに投票したように見える初のスーパーヴィランだ続きを読む